「さわり」「ごぼう抜き」

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間違いやすい日本語⑧

その言葉の使い方、本当に正しいですか?

「さわり」「ごぼう抜き」

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普通に使っていた表現が実は本来の意味では誤用だった……という経験はありませんか?日本語のなかには、正しいと思って大勢の人が使っている表現でも、誤用というケースがあります。今回は、そんな多くの人が間違いやすい「さわり」「ごぼう抜き」の本来の意味と使い方をご紹介します。

さわり

次のうち、正しい使い方はどちらでしょう?

1:この小説で一番重要なさわりの部分について語り合った。
2:好きな歌のイントロが聞こえてきたので、さわりの部分を思わず口ずさんだ。

一見、どちらも正しい使い方のように思えるかもしれませんが、1は小説のなかで最も大切な盛り上がりの部分、2は歌の冒頭部分という意味で「さわり」が使われています。
その「さわり」という言葉の由来をたどると、浄瑠璃用語に行き着きます。浄瑠璃の音曲のひとつ「義太夫節(ぎだゆうぶし)」のなかで、ほかの曲の旋律を取り入れた箇所が「さわり」と呼ばれていたのだそう。この「さわり」が義太夫節のなかで一番の聞かせどころ、聞きどころであったため、これが転じて歌や物語のなかで最も印象的で一番盛り上がる大事な部分、要点という意味になったといわれています。ですから、今回の答えは「1」です。
「さわり」は歌や物語の冒頭部分という意味での誤用がとても多い言葉で、平成19年度に行われた国語に関する世論調査においても半数以上もの人が「冒頭部分」という意味で認識していたことが明らかになっています。

ごぼう抜き

次のうち、正しい使い方はどちらでしょう?

1:マラソン中継の終盤で、ある選手が一気に10人ごぼう抜きにした。
2:彼は、他の同僚をごぼう抜きにして管理職に抜擢された。

「ごぼう抜き」という表現をよく聞くのは、マラソンなどの陸上競技で一人の選手が複数の人を抜き去った時が多いのではないでしょうか。しかし、実はその使い方は誤用なのです。
本来の「ごぼう抜き」とは、ごぼうを土のなかから引っ張り出す様子そのままに、棒状のものを一気に引き抜くという意味。または大勢の人のなかから一人の人材を引き抜くという意味です。つまりこの問題の正解は「2」になります。
ごぼうは一度に複数を引っ張り出すのが大変なため、一本一本抜く方法が取られているそうです。そしてごぼうを抜く時は、真上に一直線に引っ張って抜くのだとか。そんな抜きにくいごぼうを一本ずつ引っ張り抜く作業を、人に見立てて例えたのが、「ごぼう抜き」です。
このように「ごぼう抜き」の語源をたどると、たくさんのなかからごぼうを一本ずつ抜く様子がもととなっているため、陸上競技などで一人の選手がたくさんの人を一気に追い抜く際に使われる「ごぼう抜き」は誤用ということがわかります。
元は誤用だった「1」の使い方も、マラソンや駅伝中継でもよく使われていますよね。現在では、この誤用も国語辞典に掲載されているほど一般的な使い方となっています。

ちなみに、ごぼうは地方によって長さが違うものだそうです。主に関東では長いごぼう、関西では短いごぼうが栽培されているのだとか。これは関東と関西の土の違いによるものだそう。
関東の土はきめが粗くて水はけがよく、深さがある土壌のため、根が深く張りやすい長いごぼうが栽培されていました。一方、関西は土が硬めで浅い土壌なので、根が深くまで伸びずに短いごぼうが主流になったといわれています。関西のごぼうは根が短く抜きやすいため、「ごぼう抜き」の語源となったごぼうは関東のものであるという説があるそうです。

今回ご紹介した表現は、誤用の方が広まっている言葉ではなかったでしょうか。日本語の表現は常にどこかで変化が起こっているものですから、今後新たな意味を持つ表現が現れる可能性もありそうですね。

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