郷土料理|お平(福島県)大自然の恵みに感謝する祝い膳

郷土料理|お平(福島県)大自然の恵みに感謝する祝い膳


「お平(おひら)」は平らなお皿に魚や野菜がたっぷり入った煮しめ。奥会津の只見町(ただみまち)を中心に、古くから年越しをはじめとしたお祝い時に食べられる伝統食です。具材の盛り付け順が決まっており、きちんと意味があるのも祝いの席らしい一品です。

特別な日に食べる、素朴でぜいたくな味

お平は、只見町の冠婚葬祭と大晦日に欠かすことのできない特別な煮物です。正式な具材は祝い事らしく7種類で、アカハラ、舞茸、揚げ豆腐、結び昆布、ごぼう、にんじん、長芋。長芋はひげ根を焼き取って皮ごと煮込み、豆腐は三角に切るのが昔からの慣わしです。

福島県南会津郡只見町は、日本有数の豪雪地帯。大自然と文化が共存する世界的に貴重なエリアとして、只見町全域が広大な生物圏保護地域(只見ユネスコエコパーク)に指定されています。雪深く、海産物も乏しかった昔の只見町ではお平は大変なごちそうでした。

赤いラインがおめでたい! 季節限定のアカハラ

聞き馴染みがない「アカハラ」は、「ウグイ」と呼ばれる魚のこと。ウグイは生息分布が広いため、アイソ、クキ、タロなどさまざまな呼び名を持っています。河口あたりの汽水域(海水と淡水が混合する水域)にも生息しているので、海釣り・川釣り両方で釣れることのある魚です。小骨が多くあまり人気がない魚といわれていますが、塩焼きや天ぷらにすると美味しくいただけます。

アカハラの由来である赤い腹は、産卵期のウグイの特徴。ウグイは3月から6月に産卵期を迎え、オスメスどちらにも婚姻色と呼ばれる赤いラインが腹部にあらわれます。ウグイが美味しいのもこの時期で、アカハラと呼べるウグイはこの時期だけのもの。焼くと赤色が美しいオレンジ色に変わり、お祝い膳に彩りを添えてくれます。

お平に用いるアカハラは、産卵期のウグイです。昔は囲炉裏(いろり)でカリカリに焼いて水分と脂を抜き、その年の冬に備えて保存していました。寒さ厳しい大晦日に春の魚をいただける、昔ながらの知恵ですね。

お平の「盛り付け方」

具材の盛り付け方に決まりがあるのも、お平の特徴のひとつです。椀の最初(底)に入れるのは、「土の中で育つもの」であるごぼう・にんじん・長芋。次は「海のもの」として結び昆布。3番目は「土の上で育つもの」として舞茸、その上に大豆からできた「畑のもの」の揚げ豆腐。最後に「川のもの」のアカハラが丸ごとのります。また、浅く平たい器(御平椀・おひらわん)に入れることが、「お平」という名前の由来であるとされています。

山の幸と海・川の幸を順番に入れるお平は、自然と人との営みをそのまま表しているよう。このように食材に意味を持たせて盛り付けするのも、大自然の厳しさやありがたさを知っている人々だからこそ。具材のひとつひとつに感謝していただくための知恵なのかもしれません。年取り(大晦日)の晩には必ずお平を作り、神さまにお供えしてからお下がりをいただきます。

もうひとつのお祝い膳 会津地方の郷土汁「こづゆ」

会津にはほかにも、お祝いには欠かせない料理「こづゆ」があります。これは里芋、にんじん、ギンナン、豆麩(まめふ)、春雨など、7~9種類の具材が入ったしょうゆベースの汁物。お出汁に干した貝柱を使い、器には会津塗りのあかい天塩皿(てしおざら・小さくて浅いお皿)が用いられます。正式なお祝いの席でも振る舞われ、こづゆはおかわりしても失礼にあたらないという慣わしがあります。

こづゆとお平は、どちらも種類豊富な具材を用いて、平らな器に盛り付けます。お祝いとおもてなしの気持ちが、内陸部で入手困難だった魚貝類を用いるところにあらわれています。

具材豊富なお平は、土・海・畑・川とそれぞれの恵みに感謝しながら年越しとともにいただく、素朴だけどぜいたくな味わいのお祝い膳です。今ではほとんどの食材が簡単に手に入るようになりましたが、おもてなしやお祝いの気持ちは忘れずにいたいですね。

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